●放射線量と身体影響の関係については、これまで実施された多くの調査・研究結果等からいろいろなことが判明しています。それをもとに安全基準が作られています。
●放射線業務従事者、一般公衆の年間線量限度は十分な安全性を確保するため、法律によって定められた数値限度です。
受けた放射線が少量の場合は、遺伝子(DNA)が持つ修復機能で回復しますが、一度に多量の放射線を受けると
いろいろな症状が現れます。
例えば、被ばく線量が500ミリシーベルトを超えると白血球の減少が見られ、1,000ミリシーベルト以上になると自覚症状が現れます。そして、4,000ミリシーベルトを全身に浴びると、被ばくした半数の人たちが骨髄障害で死亡します。
線量によって重症度は変わりますが、がんや遺伝的影響(確率的影響※)は、線量を下げても発生する可能性が
ゼロになることはありません。しかし、がんに関しては、100ミリシーベルト以下では、自然に発生するがんと区別できないといわれています。
そこで、できるだけ被ばく線量を下げるために、職業として放射線を扱う人は1年間で50ミリシーベルト以下、5年間で100ミリシーベルト以下、一般の人は1年間で1ミリシーベルト以下と線量限度が法律で定められています。
※確率的影響については「人体への影響」を参照ください。
(公財)放射線影響研究所では、広島・長崎で被爆された方々の放射線の影響について調べる「原爆被爆者の疫学調査」が行われています。
その調査において、原子爆弾により短時間で大量の放射線を受けられた方々の尊い命をもとにしたデータによると、1,000ミリシーベルトを被ばくした人全員のうち、10%の人が被ばくを原因とするがんで死亡していたことがわかりました。
ICRPの勧告によると、同じ1,000ミリシーベルトでも長期間にわたり被ばくした場合では、一度に受ける放射線量が少ないので、被ばくを原因とするがんの死亡は5%といわれています。
これを100ミリシーベルトまで下げると、がんによる死亡率は一生涯で0.5%増加するということになります。
放射線被ばくを規定する法律では、確定的影響の防止と確率的影響の減少を考慮して、しきい線量からさらに低いところで「線量限度」を設定しています。
線量限度は、どんなに低い線量でも、人体に影響(がんや遺伝的影響)を及ぼす確率はゼロではないという放射線防護の考えに基づき定められた線量値で、公衆被ばくの場合は1年あたり1ミリシーベルトとされています。
これは、自然界と同レベルの値であり、この線量値を超えたら即がんになるわけではありません。
なお、日本の線量限度は、ICRP勧告に基づいて定められています。
線量限度を超えたら危険!?
線量限度は、例えば駅などのホームに設けられた防護柵のようなもの。電車の駅などでは事故を防ぐためにホームの縁から1〜2mも離れた位置に防護柵が設けられています。間違って柵の内側に入ってしまったとしてもすぐに事故が発生するとは限りませんが、安心・安全な生活を送るためにはルールを守ることが大切です。
しきい線量…放射線を受けたときに、症状が現れる最小の放射線量のことをいいます。
ICRP…国際放射線防護委員会(International Commission on Radiological Protection)は、1928年国際放射線学会議で国際X線・ラジウム防護委員会として発足。 放射線を安全に使うため多くの研究成果をもとに、放射線防護に関する勧告書を多く発刊しています。