自然放射線による影響の違い
日本の各地域において自然放射線の量に差はありますが、そのレベルは0.8〜1.2ミリシーベルト/年程度。受ける放射線の線量が100ミリシーベルト以下では、人体への影響は確認されていないので、日本の大地から受ける自然放射線の量では、地域に関係なく発病への影響はないと考えられます。
また、世界を見ると、自然放射線量の地域差はさらに大きくなり、イランのラムサールやインドのケララ州などは、大地から受ける自然放射線の量が日本の約10倍以上。
しかし、これらの線量が多い中国やインドの住民の健康影響について、自然放射線が少ない地域との差は確認されていません。
*放射線が人体に与える影響については「放射線が身体に与える影響」のページを参照ください。
被ばくとは
放射線を受けることを「被ばく」といい、被ばくは「内部被ばく」と「外部被ばく」に分けられます。
内部被ばくとは、呼吸や食べ物によって体内に取り込んだ放射性物質が出す放射線で被ばくすることです。
内部被ばくで受ける線量は、食品や飲料水中の放射性物質濃度と摂取量の積に比例します。政府は濃度の規制値を設けて出荷制限や摂取制限をして、一人が最大に受ける線量を大きくしないように促しています。
一方、「外部被ばく」とは、体の外から放射線を受けることをいいます。
私たちは日常的に自然放射線や人工放射線を受けていますが、不必要な放射線はできれば受けないようにしていくことが重要です。
外部被ばくを減らすための方法として、放射性物質から[1]離れる [2]遮へいする〈さえぎる〉(ガンマ線の遮へいには鉛や鉄などの重い金属が効果的)[3]受ける時間を短くするがあります。
体内に入った放射性物質
体内に取り込まれた放射性物資は、例えばヨウ素131は甲状腺に、セシウム134とセシウム137は全身に、ストロンチウム90は骨に集まります。
しかし、いずれの放射性物質も放射線を出すことで放射能を減らす「物理学的半減期(一般的な半減期)」と排泄などの体外放出による「生物学的半減期」の両方の効果により、体内に存在する量が「実効(有効)半減期」に従って減っていきます。
そのため、内部被ばくを考えるときは、「物理学的半減期」と「生物学的半減期」から算出される、実際に体内に放射性物質がとどまる時間を表す「実効(有効)半減期」が重要になります。例えば、ヨウ素131の「実効(有効)半減期」は「物理学的半減期」に近く、セシウム137では「生物学的半減期」とほぼ同じ値になっています。
*半減期については「放射性物質の半減期」のページを参照ください。
※1 物理学的半減期:崩壊によって放射能を出す能力が半分になる時間。
加熱しても薬品を使っても変えることはできません。
※2 生物学的半減期:生物学的半減期:体内にある物質が排泄などの放出によって半分になる時間。
個人差があり、水分や食物、薬の摂取などで変えることができます。
※3 実効(有効)半減期:体内の放射性物質が放出や崩壊によって半分になる時間です。
食料品からの被ばく
福島第一原子力発電所から放出された放射性物質は、大気中を漂い、雨や雪によって地表に降下しました。
そのとき、川に溶け込めば水道水などが、植物に付着すればその植物が放射性物質に汚染されます。
例えば、セシウム134やセシウム137が畑や田んぼなどの土壌についた場合、土壌を汚染するだけでなく、
植物の中に取り込まれます。そして、その植物を家畜が食べれば、家畜の肉は放射性物質に汚染されます。
同様に、ストロンチウム90はカルシウムと似ているので、カルシウムと一緒に移行し、食品に取り込まれていきます。
このように、放射性物質は、空気、水、植物を経由して、放射性物質に触れていない動物などに取り込まれ、食品へと広がりました。
■原子炉から放出された放射性物質の畜産物、農作物への移行経路(原子力発電所事故が起こった場合)