●がんの発生要因には放射線以外にも大気汚染、生活習慣(喫煙、大量飲酒、運動不足等)など日常生活のさまざまなものがあり、症状から要因を特定することは一般に困難です。
●放射線によるがん死亡率はこれまでの知見から、100ミリシーベルトでは一生涯で0.5%増加し、これより少ない 線量では増えるとも増えないともいえない、と結論づけられています。 しかし、放射線がDNAを傷つけることは発がん要因の一つになるので、被ばくを少なくすることは重要です。
私たちの体を構成する細胞の中にある遺伝子(DNA)は、年齢を重ねるごとに、また、食事や飲酒、喫煙、そして、放射線によっても傷つけられます。
しかし、細胞には傷ついたDNAを修復する能力があるため、もしも、すべてのDNAが完全に修復されれば問題はありません。ところが、修復ミスしたDNAが生き残った場合、その誤った情報が次々に伝えられることで通常の細胞ががん細胞になることがあります。(放射線が身体に与える影響についてはこちらを参照ください)
放射線に被ばくしたからといって、必ずしもがんになるわけではありませんが、放射線がDNAを傷つけることは発がん要因の一つになるので、被ばくを少なくすることは重要です。
■がんのリスク -放射線、ダイオキシンと生活習慣(JPHC Study)-
相対リスク | 放射線(固形がん:広島・長崎) | ダイオキシンと生活習慣 |
1.50〜2.49 | 1,000-2,000mSv(1.8) 【1,000mSvあたり1.5倍と推計】 |
喫煙(1.6) 大量飲酒(450g以上/週)※(1.6) |
1.30〜1.49 | 500-1,000mSv(1.4) | 2, 3, 7, 8-TCDD血中濃度数千倍【伊工場爆発事故】(1.4) 大量飲酒(300g-449g/週)※(1.4) |
1.10〜1.29 | 200-500mSv(1.19) | 運動不足(1.15-1.19) 高塩分食品(1.11-1.15) |
1.01〜1.09 | 100-200mSv(1.08) | 野菜不足(1.06) 受動喫煙〈非喫煙女性〉(1.02-1.03) |
検出不可能 | 10s0mSv未満 | 2, 3, 7, 8-TCDD血中濃度数百倍【農薬工場爆発事故周辺住民】 |
(国研)国立がん研究センターHPをもとに作成 ※飲酒については、エタノール換算量を示します。
現在、日本人の死因の約半数は、がん、脳卒中、心臓病で、なかでもがんは約30%を占めており、死亡原因の第1位となっています。
正常な細胞ががん細胞になる原因として、発がん性物質の存在が確認されており、その物質をつくりだす原因として、老化や喫煙、大気汚染、そして放射線も挙げられています。発生したがんがどの原因によるものかは特定できませんが、被ばくした放射線量に比例して発がん率が増えるとして、日本では被ばくによる線量限度が法律で定められています。
例えば、職業として放射線を取り扱う場合は、被ばく線量は5年間の平均で年間20ミリシーベルトと決められており、安全確保のための管理区域の設定や放射線業務従事者の個人線量計の着用、健康診断なども定められています。
とはいえ、がん以外にも喫煙や肥満、飲酒などが私たちの寿命短縮に影響を及ぼすように、日常生活には放射線だけでなくさまざまな健康阻害リスクがあります。
ダイオキシン…一般に、ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDD)とポリ塩化ジべンゾフラン(PCDF)をまとめてダイオキシン類と呼びます。ダイオキシン類は物の燃焼の過程等で生成されるため、環境中に広く分布しています。通常の生活のなかで摂取する量では急性毒性は生じませんが、事故などの高濃度の曝露の際の知見では、発がん性が認められています。
2,3,7,8-TCDD…PCDDのうち、2と3と7と8の位置に塩素の付いたもので、ダイオキシン類のなかで最も毒性が強いことで知られています。